狼達の困惑 |
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床に広がる大理石は冷たく静けさを保ち誰かを待ち受けているかのように見える。息を吐くと白く空気が濁った。窓の外には雪が降り積もり杉林が枝をしなやかに弛ませている。司祭は何処へ消えたのだろう。教徒達は?
貴方は周囲を見渡す。小さな子供が屈んでいるのをみつけた。
歩み寄ろうとしてふと、立ち止まる。
その子供の背中には「穴」があった。
漆黒のその闇に見入られた貴方はただ立ちすくみ茫然とした。
脚が鉛のように重く力が入らない。
不意に、子供がこちらを振り返り言葉を発した。
「愚か者は立ち去れ」
低い、老女のような声だった。
無垢なはずの瞳は紅く充血していた。
貴方は知らなかった。自分が「愚か者」と呼ばれる存在だと言うことを。
今まで少なからず誰かを傷つけて生きてきたことを。
目を閉じて、唇を噛んだ。
痛むばかりで、夢は醒めない。
投稿者 weidg5 | 返信 (0) | トラックバック (0)